大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和42年(ム)4号 判決

主文

再審原告の訴を却下する。

再審の訟訴費用は再審原告の負担とする。

事実

再審原告訴訟代理人は

「一、東京高等裁判所が昭和三九年四月二七日同庁昭和三〇年(ネ)第二二六四号所有権取得登記等抹消請求控訴事件につき言渡した判決を取り消す。

二、(一) 再審被告久木留広は再審原告に対し別紙第一物件目録記載の不動産につき東京法務局府中出張所昭和二九年三月二二日受付第二五五五号をもつてした同年同月二一日代物弁済による所有権取得登記の抹消登記手続をなすべし。

同再審被告は再審原告に対し右不動産につき前同出張所昭和二九年二月二五日受付第一五七一号をもつてした同年同月二〇日契約による同再審被告のための代物弁済による所有権移転請求権保全の仮登記の抹消登記手続をなすべし。

(二) 再審被告斉藤重隆は再審原告に対し右不動産につき前同出張所昭和二九年三月三〇日受付第二八六九号をもつてした同年同月二四日同再審被告のための売買による所有権取得登記の抹消登記手続をなすべし。

(三) 再審被告の玉川順吉は再審原告に対し右不動産につき前同出張所昭和二九年四月八日受付第三二三一号をもつてした右同日同再審被告のための売買による所有権取得登記の抹消登記手続をなすべし。

(四)(イ) 再審被告東孝一は再審原告に対し右不動産につき前同出張所昭和二九年六月二八日受付第六〇八五号をもつてした右同日同再審被告のための売買による所有権取得登記の抹消登記手続をなすべし。

(ロ) 再審被告東孝一は再審原告に対し別紙第二物件目録記載の(1)の土地に対する前同出張所昭和三〇年八月八日受付表題部九番の登記の抹消登記手続を、(1)の土地に対する右出張所同日受付表題部八番の抹消された登記の回復登記手続を、(1)の土地に対する右出張所同日受付表題部八番の登記の抹消登記手続を、(1)の土地に対する表題部七番の抹消された登記の回復登記手続を、(1)の土地に対する表題部八番の合併登記が抹消されたので、北多摩郡国分寺町国分寺本多新田字なだれ上四九五番の三宅地一四五・四五平方メートル(四四坪)につき昭和三〇年八月八日受付抹消された表題部七番の回復登記手続を、次に右土地の表題部七番の抹消登記手続を、次に右土地につき昭和三〇年八月八日受付表題部六番の合併のため抹消された登記の回復登記手続を、次に右土地につき同日受付表題部六番の抹消登記手続を、次に右土地につき同年二月二三日受付表題部五番の抹消された登記の回復登記手続を、次に右土地につき表題部五番の抹消された登記の回復登記手続を次に右土地につき明治四一年五月二〇日受付表題部四番の回復登記手続を、前同目録記載の(2)ないし(5)の土地に対する表題部一番の登記の抹消登記手続を、同目録記載の(6)の土地に対する昭和三〇年八月八日受付表題部八番の登記の抹消登記手続を、右(6)の土地につき昭和三〇年三月二三日受付表題部七番の抹消登記の回復登記手続を、右(6)の土地につき表題部七番の抹消登記の回復登記手続を、右(6)の土地につき表題部七番の登記の抹消登記手続を、右(6)の土地につき表題部六番の抹消登記の回復登記手続を、前同目録記載の(7)ないし(25)の土地につき表題部一番の抹消登記手続をそれぞれなすべし。

(五) 再審被告立川金融株式会社は再審原告に対し別紙第一物件目録記載の土地につき前同出張所昭和三〇年二月二一日受付第一〇三〇号をもつて同再審被告のためにされた抵当権設定登記の抹消登記手続をなすべし。

(六) 再審被告村主伝蔵は再審原告に対し別紙第二物件目録記載の土地につき前同出張所昭和三一年一二月一一日受付第一二八七五号をもつて同再審被告のためにされた賃借権設定登記の抹消登記手続をなすべし。

(七) 再審被告村主伝蔵は再審原告に対し右目録記載の土地につき前同出張所昭和三一年一二月一一日受付第一二八七六号をもつて同再審被告のためにされた地上権設定登記の抹消登記手続をなすべし。

(八) 再審被告蜂屋勝己は再審原告に対し右目録記載の(6)ないし(25)の土地につき前同出張所昭和三〇年八月一七日受付第五六八三号をもつて同再審被告のためにされた抵当権設定登記の抹消登記手続をなすべし。

(九) 再審被告畑野年は再審原告に対し右目録記載の(9)の土地につき前同出張所昭和三二年六月一一日受付第六七〇三号をもつて同再審被告のためにされた所有権取得登記の抹消登記手続をなすべし。

(一〇) 再審被告森田清重は再審原告に対し右目録記載の(13)及び(14)の土地につき前同出張所昭和三二年七月一九日受付第八二九二号をもつて同再審被告のためにされた抵当権設定登記の抹消登記手続をなすべし。

(一一) 再審被告高石正史は再審原告に対し右目録記載の(20)の土地につき前同出張所昭和三二年六月一一日受付第六七〇四号をもつて同再審被告のためにされた所有権取得登記の抹消登記手続をなすべし。

(一二) 再審被告渥美タキは再審原告に対し

(イ) 右目録記載の(9)及び(20)の土地が再審原告の所有であることを確認し

(ロ) 右(9)の土地につき前同出張所昭和三六年五月一六日受付第一二三五三号をもつて同再審被告のためにされた所有権取得登記の抹消登記手続をし

(ハ) 右(20)の土地につき前同出張所前同日受付第一二三五四号をもつて同再審被告のためにされた所有権取得登記の抹消登記手続をなす

べし。

三、本訴及び再審の訴訟費用は再審被告らの負担とする。」

との判決を求め、その理由として

「一、再審原告を控訴人、再審被告らを被控訴人らとする東京高等裁判所昭和三〇年(ネ)第二二六四号所有権取得登記等抹消請求控訴事件の控訴棄却の判決は昭和三九年四月二七日に言渡され、その正本は翌二八日再審原告に送達されたが、これに対し右控訴人である再審原告(訴訟代理人は弁護士佐久間和)から上告申立があり、最高裁判所昭和三九年(オ)第一一五一号上告事件として係属し、昭和四二年一月一九日に上告棄却の判決の言渡があつたので、右控訴審判決は同日をもつて確定した。

二、 しかし右確定の控訴審判決(以下原判決ともいう)には別紙再審理由第一点ないし第六点記載の如く民事訟訴法第四二〇条第一項第九号にいう「判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重大ナル事項ニ付判断ヲ遺脱シタルトキ」に該当する事由がある。よつてこれを取り消し請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。」

と述べ、なお再審被告ら(ただし同立川金融株式会社を除く)の出訴期間の抗弁に対し「前記控訴審判決が確定するまでの経過は前叙のとおりである。しかし前記上告審判決の正本が再審原告に送達されたのは昭和四二年一月二一日であるから、再審原告はこの時においてはじめて右上告審判決を読了し得べき状態となり、これと対比して右控訴審判決を精査することにより本件再審の事由を知るに及んだのであつて、従つて本件再審の訴の出訴期間は右送達のあつた一月二一日から起算して三〇日内、すなわち同年二月二〇日までと解すべきところ、再審原告が本件再審の訴を提起したのは同年二月二〇日であるから、右訴提起は適法である。」と述べた。

再審被告ら(ただし同立川金融株式会社を除く)訴訟代理人は本案前の申立として主文同旨の判決を求め、その理由として「再審原告主張の一の事実は認めるが、本件のように再審の事由が民事訴訟法第四二〇条第一項第九号にいう判断遺脱である場合には、再審の対象となる確定判決(本件では再審原告主張の控訴審判決)の正本が当事者に送達された時において再審の事由を知つたものと見られるから、この場合同法第四二四条第一項にいう三〇日の再審期間はその判決確定の日から起算すべきであり、従つて本件再審についても右控訴審判決が確定した昭和四二年一月一九日から三〇日内、すなわち同年二月一八日までに出訴しなければならないところ、再審原告は本件再審の訴を昭和四二年二月二〇日に至つて提起した。よつて本件再審の訴は出訴期間を徒過してされた点において不適法であるから、その却下を求める。また本件再審の事由はいずれも再審原告が前記本件上告事件において上告理由として主張したものであつて、本件再審の訴はその点でも同法第四二〇条第一項但書の規定に触れ、不適法であるからその却下を求める。」と述べ、本案について主文同旨の判決を求め、答弁として「前記控訴審判決はその理由において適法な証拠の取捨判断により正しい事実の認定をしているのであつて、そこに再審原告の主張するような判断遺脱はない。再審原告の主張するところはいずれも結局独自の見解のもとに右判決の正当な理由を攻撃するに過ぎないもので、再審の事由には当らないから、同様本件再審の訴の却下を求める。」と述べ

再審被告立川金融株式会社代理人は本案について主文同旨の判決を求め、他の再審被告らと同趣旨の答弁をした。

理由

職権をもつて本件再審の訴がその出訴期間の内になされたかどうかについて検討するに、再審原告主張の控訴事件及び上告事件の記録に徴すれば、再審原告を控訴人、再審被告らを被控訴人らとする当裁判所昭和三〇年(ネ)第二二六四号所有権取得登記等抹消請求控訴事件の控訴棄却判決は昭和三九年四月二七日に言渡され、その正本は翌二八日再審原告に送達されたが、これに対し控訴人である再審原告(訴訟代理人は弁護士佐久間和)から上告申立があり、最高裁判所昭和三九年(オ)第一一五一号上告事件として係属中、昭和四二年一月一九日上告棄却の判決の言渡があつたので、右控訴審判決は同日をもつて確定したことが認められ、この点に関しては当事者間に争ないところである。

ところで再審の訴は当事者が判決確定後再審の事由を知つた日から三〇日内に提起しなければならない(民事訴訟法第四二四条第一項)が、本件のように再審の事由が当該再審の対象たる確定判決における判断遺脱(同法第四二〇条第一項第九号)を主張するものである場合には、右確定判決における判断遺脱の覚知をさまたげるような特別の事情のない限り、その判決の正本が送達された時において再審の事由を知つたものと推定するのが相当である。それなら本件においても再審原告に対し前記控訴審判決の送達があつた昭和三九年四月二八日において再審原告は右特別の事情のない限り(この特別の事情について再審原告は主張立証をしない)右控訴審判決につき判断遺脱の再審の事由あることを知つたものというべきである(のみならず前記記録に徴すれば、本件再審原告訴訟代理人は右控訴審における控訴代理人でもあり、且つ前記のように上告申立をしていることが認められ、その点で右認定は一そう強められる)。そして右の場合のごとく判決の確定以前に再審の事由を知つたときは、再審が確定判決に対する不服の訴であることに徴しその判決の確定と同時に再審の訴の出訴期間が始まるものと解するのが相当である(昭和二八年四月三〇日最高裁判所判決、最高裁判所民事判例集七巻四八〇頁参照)。前記のごとく右控訴審判決が確定したのが昭和四二年一月一九日であるから、本件再審の訴の出訴期間は同日から三〇日内、すなわち昭和四二年二月一八日(この日が土曜でもあつて一般の休日でないことは当裁判所に顕著である)までと見なければならない。そうだとするとそれより二日遅れて同月二〇日に提起された(この点は本件記録により認められる)本件再審の訴は出訴期間を徒過してされたものというべく、その点で不適法として却下を免れない(再審原告は本件の場合の出訴期間は前記上告審判決の正本の送達があり、再審原告が同判決を読了し得べき状態になつた時より起算すべき旨主張するけれども、その失当であることは前説明に徴しきわめて明らかである)。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第四二三条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例